押し入れの奥から、細長い桐箱が出てきた。開けると、三本の糸が張られた楽器が入っている。母が弾いていたやつだ——そこまでは分かる。
問題はその先だ。これがいくらのものなのか、そもそも売れるものなのか、まるで見当がつかない。おまけに皮は破れているし、糸も切れている。

皮が破れてる時点で、もう値段なんてつかないですよね……?
そう思って手が止まっている人に、先に結論だけ渡しておく。皮が破れていても、三味線は売れる。張り替えが前提の楽器だからだ。
そしてもうひとつ。三味線の買取相場は「いくら」と一言では言えない。棹(さお)に使われている木で、価格帯が丸ごと変わるからだ。
- 棹の木材で、買取相場の桁が変わる——花梨・紫檀・紅木の見分け方
- 三味線を買取品目に明記している業者に、無料で査定してもらう(査定だけでもOK)
- 皮が破れていても売れる——張り替えが前提だから
- 撥や糸巻が象牙だった場合の制度と、確認のしかた
- 値段がつかなかったときの処分の出口
先に白状しておく。俺は元楽器店スタッフで、これまで30社以上に査定を出して比べてきた人間だ。だが三味線を売った経験はない。
扱ってきたのはギター、ベース、鍵盤、それにオーディオ。三味線の査定台に立ったことは一度もない。だからこの記事は、俺の武勇伝では書かない。
- 買取業者・三味線専門店が公式に公表している相場と買取条件(2026年8月13日確認)
- 島村楽器の買取ページ、環境省の象牙取引制度ページなど一次ソースの原文
- 環境省・帝国データバンクなど公的機関・調査会社の報告書(対象期間を本文に明記)
- 元楽器店スタッフとして知っている買取額の決まり方(金額の断定はしない)
実家から三味線が出てきた。まず何を見るか
三味線はだいたい、押し入れの奥か、仏間の隅か、桐箱の中から出てくる。弾いていた本人はもういなくて、残された側は価値の見当がつかない。この章では、専門知識ゼロの状態から最初に見るべき場所を1つだけ決める。手を動かすのはそこからでいい。
先に言っておく。俺は三味線を売ったことがない
楽器の買取について書いてきた人間が、いきなり「経験がない」と言うのは格好が悪い。それでも最初に書いておく。ここを曖昧にした記事は信用できないからだ。
俺が売ってきたのはギター8本、エフェクター20個以上、アンプ、PA機材一式。バンドが解散したときに、まとめて手放した。和楽器は一棹も扱っていない。



知らないことを知ってるふうに書くのが、この業界で一番タチが悪い。だから俺が書けるのは「業者が何を公表しているか」と「買取額がどう決まるか」の二つだけだ。
ただし後者は、元楽器店スタッフとして自信がある。買取額の上限を決めているのは、その店がいくらで売り切れるかだ。この構造は楽器のジャンルが変わっても動かない。
売値が読めない商品は、買値も上げられない。三味線を「よく分からない棒」として見る店と、材質から売り先が浮かぶ店では、出せる金額の天井がそもそも違う。
最初に見るのは「棹(さお)」の色だ
胴でも皮でも撥でもない。最初に見るのは棹の色だ。棹とは、糸が張られている細長い部分のこと。手で握るあの棒だ。
明るい場所に持っていって、真上から見てほしい。赤みが強く、木目が細かく詰まっているなら、上位の材が使われている可能性がある。理由は次の章で全部書く。
| 部位 | どこのことか |
| 棹(さお) | 糸が張られた細長い部分。ここが価格を決める |
| 胴(どう) | 四角い箱の部分。内側に彫刻があることがある |
| 皮 | 胴の表裏に張られた膜。犬皮・猫皮・人工皮 |
| 撥(ばち) | 弾くための道具。素材で評価が変わる |
| 糸巻・駒 | 糸を留める部品と、糸を支える小さな部品 |
もうひとつ、覚えておいてほしい数字がある。三味線の全長は約100cm。琴が約180cm、尺八が約54cmだから、ちょうど中間くらいのサイズだ。
この寸法が、記事の後半でもう一度効いてくる。運べるサイズかどうかが、売り先の選択肢を決めているからだ。今は頭の隅に置いておいてくれればいい。
「価値が分からないまま捨てる」が一番こわい
実家じまいで楽器が出てきた人の相談を受けていて、いつも感じることがある。多くの人は、売りたいわけじゃないのだ。
母が大事にしていたことは知っている。でも自分は弾かないし、置き場所もない。自分の判断で捨てて、後から「あれは高いものだった」と言われるのが怖い。



売る気がなくても、査定だけお願いするのって迷惑じゃないですか?



迷惑じゃない。査定は無料でやってる業者がほとんどだし、断る前提で呼んでもいい。「専門家が見た」って事実が、その後の判断をうんと軽くしてくれる。
査定だけ受けて断ることについては、キャンセル料の考え方も含めて出張買取は査定だけで断れる?楽器のキャンセル料にまとめてある。
棹の木材で、買取相場の桁が変わる
ここがこの記事の中核だ。「三味線の買取相場はいくらですか」という質問に、まっすぐ答えられない理由がある。棹に使われている木で、価格帯が完全に分かれてしまうからだ。同じ形をした楽器で、桁が3つ変わる。まずは公表されている数字を見てほしい。
花梨・紫檀・紅木——公表されている相場の帯
買取業者バイセルが公式コラムで、棹の材質ごとの相場を公表している。まずはそのまま並べる。
| 材質 | 主な用途 | 公表されている相場 |
| 花梨(かりん) | 稽古用・初心者用 | 数百円〜5,000円程度 |
| 紫檀(したん) | 中級者用 | 5,000円〜30,000円程度 |
| 紅木(こうき)・金細 | 演奏会用・高級品 | 30,000円〜数十万円以上 |
出典はバイセル公式コラム(2026年8月13日確認)。これは同社が公表している相場であって、あなたの三味線の査定額ではない。そこは切り分けて読んでほしい。
実物を見ずに金額を言い当てる記事があったら、それは信用しないほうがいい。ここで示せるのは帯であって、値札ではない。
最下位と最上位で3桁違うということ
表をもう一度見てほしい。一番下が「数百円」で、一番上が「数十万円以上」だ。同じ三味線という楽器で3桁違う。
ギターで言えば、練習用の入門機とヴィンテージのレスポールが同じ棚に並んでいるようなものだ。見た目はどちらも三味線で、素人目には区別がつかない。



え、三味線って三味線でしょ?全部同じじゃないの?



その「全部同じでしょ」が、一番損する入口な。骨董屋の店主が三味線を手に取って最初にやるのが、棹をひっくり返して木目を見ることだ。理由がある。
実際の買取例も見ておこう。骨董品買取店の五宝堂が、三味線の参考買取価格を公表している(2026年8月13日確認)。
| 品目 | 参考買取価格 |
| 三味線 純金刻印 紅木 子持ち綾杉胴 | 35,000円 |
| 津軽三味線 | 35,000円/38,000円 |
| 三味線(金細、子持ち綾杉胴) | 20,000円 |
| 津軽三味線 太棹 丸打胴 延棹 撥ソフトケース付き | 12,000円 |
| 三味線 一枚甲 鼈甲撥 | 5,000円 |
| 沖縄三味線(三線) | 5,000円 |
ここで注目してほしいのは金額そのものより、並んでいる言葉のほうだ。紅木、金細、子持ち綾杉胴、太棹。この4つが繰り返し出てくる。逆に言えば、業者はこの言葉に当たる特徴があるかどうかを見ている。見るポイントは公開されているということだ。
だから「三味線の買取相場は?」に一律の答えはない
相場表を先に出しても、読者は自分がどの行に当てはまるのか言えない。ここが、この検索キーワードの難しいところだ。
しかも出典によって帯が微妙に違う。三味線を扱う業者は骨董系と楽器系の両方にいて、業者によって公表値が違うのは当たり前だと思っておいたほうがいい。
- 相場を調べる前に、自分の三味線がどの帯かを判定する
- 判定できる要素は棹の色・木目・太さ・胴の彫り・継ぎ目・付属品
- そのうえで、公表値の帯と照らして「おおよそどのへんか」を掴む
判定のやり方は次の章で全部書く。その前に、ここで一度だけ現実的な話をしておきたい。どれだけ丁寧に判定しても、最終的な金額は実物を見た人間しか出せない。だから判定は「どこに出すかを決めるため」にやるのであって、金額を当てるためじゃない。
三味線を買取品目に明記している業者から見てもらう
下にボタンを置いた理由を先に言っておく。福ちゃん楽器買取は、公式の買取品目一覧に三味線を名指しで載せている数少ない業者だ(2026年8月13日確認)。
和楽器のうち三味線・笛・尺八・鼓・二胡が対象として並んでいる。買取方法は出張と店頭の2つ。皮が破れた状態でも相談できる。
評判のほうを先に見ておきたい人は、福ちゃん買取の評判は悪いのかを読んでから決めればいい。順番はどちらでもいい。
自分の三味線を見分ける——棹・胴・撥・糸巻
ここからは手を動かす。押し入れから出して、明るいところに横たえて、順番に見ていく。専門知識はいらない。見るのは色・木目・彫り・素材の4つだけだ。全部で5分もかからない。
棹の色と木目(トチ)を見る
紅木は赤褐色をしている。花梨はもっと明るい黄褐色で、紫檀はその中間から黒みがかった色だ。赤みが強いほど上位の材である可能性がある。そしてもうひとつ、業界で「トチ」と呼ばれるものがある。紅木の表面に現れる縞模様のことだ。
紅木の棹に現れる、細かい縞のような木目。「ビッシリとトチが入っている」ものが高く評価されると、複数の買取業者が共通して挙げている。樹齢200年以上の紅木は高級品とされる。
ここで注意がある。花梨だから価値がない、とは限らない。ただし条件が付く。三味線の買取を行っている三味線再生の会は、こう公表している。
メンテナンスしていない花梨・紫檀などの場合、材質の状態によっては、買取ができない場合があります
出典:三味線再生の会「三味線専門の買い取り」(2026年8月13日確認)。つまり材質より状態のほうが効く帯もあるということだ。
胴の内側の彫り——綾杉胴・子持ち綾杉胴
胴の内側に、規則的な彫刻が入っていることがある。これを綾杉胴と呼び、より手の込んだものを子持ち綾杉胴と呼ぶ。五宝堂の参考買取価格にも繰り返し登場した言葉だ。
皮が張ってあると見えないので、通常は確認できない。ただし——皮が破れている個体は、ここが覗ける。破れているからこそ分かる情報がある。
継ぎ目の「金細(金ホゾ)」
三味線の棹は3つに分解できるものが多い。三つ折れという構造で、持ち運びのために分けられるようになっている。その継ぎ目に金が使われているものがあり、これを金細(きんぼそ)または金ホゾと呼ぶ。加点要素として複数の業者が挙げている。



棹を外すのが怖けりゃ、無理に分解しなくていい。継ぎ目のあたりを覗いて、金色の金属が見えるかどうかだけ確かめれば十分だ。
撥・糸巻・駒の素材
プラスチックか、そうでないか。まずはこの二択でいい。象牙やべっ甲は素材自体の希少価値が高いと、バイセルが公式に説明している。
ただし象牙については、値段の話より先に制度の話がある。ここでは「素材を確認しておく」までにとどめて、詳しくは後の章で扱う。
天神と棹——ここは減点になる
天神とは、糸巻が刺さっている先端部分のこと。ここのヒビ・欠け・割れは、はっきりと減点になる。棹本体の反り・割れ・ヒビも同じだ。そしてここが重要なところ。皮の破れと、棹の割れは意味が違う。皮は交換できる部品で、棹は本体だからだ。
| 状態 | 意味 |
| 皮の破れ | 交換部品の消耗。減点だが致命傷ではない |
| 糸(弦)切れ | 消耗品。皮より軽い |
| 天神のヒビ・欠け | 本体の損傷。減点は重い |
| 棹の反り・割れ | 本体の損傷。減点は重い |
付属品が揃っているか
ハードケース、撥、駒、交換用の糸、譜面台。揃っているほど評価は上がる。これはどのジャンルの楽器でも変わらない。
保管状態も効いてくる。俺がギターで散々やられたのがここだ。湿度管理をしていなかった個体は、ネックが反り、フレットが浮いて、査定で容赦なく引かれた。



ケースとか撥とか、正直どこ行ったか分かんないんだけど……



探しなよ。桐箱の底とか、押し入れの別の段とか。三味線が出てきた家なら、だいたい近くに一式まとまってるはずだから。
ここまでの内容を、確認用のリストにまとめておく。スマホでこのページを開いたまま、実物の前でチェックしてもらえればいい。
| 見るところ | やること |
| 棹の色 | 赤みが強いか(紅木は赤褐色) |
| 棹の木目 | トチ(縞模様)がびっしり入っているか |
| 棹の太さ | 太棹/中棹/細棹のどれか |
| 胴の内側 | 綾杉・子持ち綾杉の彫りがあるか |
| 継ぎ目 | 金細(金ホゾ)が入っているか |
| 撥・糸巻・駒 | プラスチックか、それ以外か |
| 天神(先端) | ヒビ・欠け・割れがないか |
| 付属品 | ケース・撥・駒・替え糸・譜面台 |
太棹・中棹・細棹。津軽三味線とは何か
三味線は棹の太さで3種類に分かれる。これは単なるサイズの違いではなく、演奏するジャンルの違いだ。そして中古市場での需要の違いでもある。「津軽三味線」という名前を聞いたことがあるなら、その正体もここにある。
棹の太さで用途が変わる
手に持って、棹の幅を見てほしい。3種類の違いは、慣れれば見た瞬間に分かる。
| 種類 | 主なジャンル | 特徴 |
| 太棹 | 津軽三味線・義太夫 | 棹が太く重い。胴も大きい |
| 中棹 | 地歌・常磐津・清元 | 中間のサイズ |
| 細棹 | 長唄 | 棹が細く、全体に軽い |
持ち比べる相手がいないと判断しづらいが、明らかにずっしり重く、棹を握ったとき手のひらに余るなら太棹の可能性がある。逆に、細くて軽くて上品な印象なら細棹だ。長唄用として広く使われてきたタイプで、稽古事の家から出てくることが多い。
津軽三味線は太棹。中古市場の需要が高い
複数の買取業者が共通して挙げているのが、太棹は中古市場の需要が高いという点だ。津軽三味線がこれに当たる。実際、五宝堂の参考買取価格にも津軽三味線が複数掲載されていた。35,000円、38,000円という例が並んでいる。
同じ五宝堂の一覧に、「津軽三味線 太棹 丸打胴 延棹 撥ソフトケース付き 12,000円」という例もある。同じ津軽三味線でも、仕様と状態で参考買取価格は変わる。種類は判断材料のひとつでしかない。
ここは正直に書いておきたい。「津軽三味線=高額」と書いてある記事は多いが、同じ出典の中に1万円台の例が並ぶ。都合のいい行だけ抜くのは違うと思う。
検索需要の面でも、津軽三味線の中古・買取を調べる人は一定数いる。ただ、その人たちが探しているのは断定ではなく判断材料のはずだ。
三線・ゴッタンは三味線の親戚だが別物
沖縄三味線(三線・蛇皮線)や、鹿児島のゴッタンは、三味線と近い形をしているが別の楽器として扱われる。五宝堂の参考買取価格には、沖縄三味線(三線)5,000円という例が載っていた。買取の窓口としては三味線と一緒に相談できることが多い。
皮が破れていても売れる
ここが、この記事でいちばん伝えたいことだ。皮が破れた三味線を前にして「もうダメだ」と思っている人が、検索の向こう側に確実にいる。俺はその人に向けてこの章を書いている。結論から言う。破れていても売れる。
皮は張り替えが前提の部品だ
三味線の皮は消耗品だ。演奏している人でも定期的に張り替える。乾燥や湿気で破れるのは、故障ではなく前提として織り込まれている。バイセルは公式コラムで、はっきりこう書いている。
皮は張り替えが可能なので、破れていても買取してもらえるケースがほとんど
出典:バイセル公式コラム(2026年8月13日確認)。破れていても買取されると、買い取る側が自分で言っているということだ。
骨董品買取店の五宝堂の買取実績にも、「皮にヤブレはありますが、天神にカケやワレはありません」という記載の津軽三味線がある。業者側が破れを前提に状態を書いている。
買取価格の比較サイト・ヒカカク!には、弦と皮が切れたジャンク品扱いの紅木地唄三味線が30,000円という実績の紹介もある(2026年8月13日確認)。
ただしこれは第三者メディアが紹介している事例であり、買取業者自身の公表ではない。そこは差し引いて読んでほしい。



てことは、破れてるとこガムテープで留めとけば見た目マシになるっしょ?



やめとけ。粘着剤が胴に残ると、その除去のほうが厄介になる。破れてるなら破れてるまま出すのが一番きれいだ。
皮が破れているほうが、むしろ見える情報がある
前の章で書いた綾杉胴・子持ち綾杉胴の彫りを覚えているだろうか。あれは皮が張ってあると見えない。つまり皮が破れている個体は、胴の内側を確認できる。マイナスに見えていた状態が、判定材料になることがある。
もちろん破れていないほうがいい。ただ「破れているから見せる意味がない」というのは、明確に間違いだ。
それでも「買取が難しくなる」ケースはある
都合のいいことだけ書くのはフェアじゃないので、逆側も書く。三味線の買取を行っている三味線再生の会が、買取が難しくなる条件を公表している(2026年8月13日確認)。
- メンテナンスしていない花梨・紫檀は、材質の状態によっては買取ができない場合がある
- メーカー製の短いサイズの三味線は買取できない場合がある
- 著しく汚れたもの、傷みが激しいものは買い取れないことがある
これは一社の基準であって、すべての業者が同じ線を引いているわけではない。整理するとこうなる。皮の破れは減点にはなる。ただし致命傷ではない。この2つを混同しないでほしい。
自分で直そうとしないこと
皮の張り替えは専門技術だ。木枠に湿らせた皮を張って、乾燥させながら張力を調整する。素人が手を出す領域じゃない。俺はギターのフレット交換を自分でやろうとして、指板に傷を入れたことがある。あのときの査定士の表情は今も覚えている。
「壊れているから売れない」という思い込みは、三味線に限った話ではない。なぜ壊れた楽器でも買取が成立するのかは、壊れた楽器やギターを買取してくれる業者と、買取できる理由で解説している。
撥や糸巻が象牙かもしれない人へ
撥・糸巻・駒に象牙が使われていることがある。ここだけは、値段の話より先に制度の話をしておきたい。理由がある。制度を知らないまま業者に断られ続けて、業者のほうを疑ってしまう人がいるからだ。順番に整理する。
まず安心してほしい。あなた自身は登録不要だ
象牙は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」、いわゆる種の保存法の対象になっている。ここまで読んで身構えた人もいると思う。だが結論から言えば、遺品整理で1回売るだけなら登録は不要だ。環境省のページに、こう書かれている。
事業とは、反復継続して行うことを指します。個人・法人、有償・無償を問いません
相続した遺品の整理のため1回限り販売・譲渡を行う場合等
出典:環境省「象牙(全形牙)・象牙製品の取引制度について」(2026年8月12日確認)。廃棄・相続についても手続きは不要とされている。
また、三味線の撥や糸巻は「全形牙」ではなくカットピース・製品の側に当たる。全形牙に求められる個体等登録の手続きは関係しない。
買い取る業者側には、登録義務がある
あなたが登録不要なのに対して、買い取る側には登録義務がある。ここが非対称になっている。事業として象牙のカットピース・端材・印材・製品を扱うには、特別国際種事業者としての登録が必要になる。環境省のページには、こうある。
象牙製品を販売等する事業者は、特別国際種事業者として登録し、登録番号等を表示する義務があります。取引先が法令を遵守していることを確認しましょう
同ページより(2026年8月12日確認)。無登録で該当する取引を行った場合の罰則も定められているが、これは事業者側に向けられたものだ。
登録簿は公開されている。だから確認できる
ここが、この章でいちばん渡したい情報だ。2018年6月1日施行の改正で、事業者登録簿の公開が制度化された。登録機関は一般財団法人自然環境研究センター。つまり「この業者は象牙を扱える立場なのか」を、こちらから確認できるということだ。
- あなた自身は1回限りの遺品整理なら登録不要
- 買い取る事業者側には特別国際種事業者の登録義務がある
- 登録簿は公開されているので、こちらから確認できる
この構造を知らないと、断られた理由を業者の不親切さだと受け取ってしまう。実際は登録の有無という制度の話であることが多い。
だから疑うんじゃなくて、確認すればいい。確認する手段があるのに、それを誰も渡していないというのが、今の検索結果の状態だと思う。



最後にひとつだけ。素材が希少だからといって、高く売れると期待しすぎないほうがいい。規制がある以上、売れる先そのものが限られるからだ。ここは冷静にいこう。
楽器店では買い取ってもらえないことがある
ここまで読んで「近所の楽器屋に持って行けばいいのでは」と思った人へ。三味線は、楽器店の買取リストに載っていないことがある。ただし「楽器店」と一括りにすると事実と違ってしまう。まず線引きから始めたい。
島村楽器は三味線を「買取取り扱いのない楽器」に挙げている
全国に店舗を持つ島村楽器の買取ページに、「買取取り扱いのない楽器」という見出しがある。そこに和楽器が入っている。
以下の楽器は、店舗買取ができません。
・PSE取得の無いデジタル機器/・ケーブル、スタンド類等の周辺アクセサリー類/・和楽器(琴、三味線、大正琴など)/・鍵盤打楽器/・オルガン ※
※商品・状態によっては買取可能な場合もございます。
出典:島村楽器「島村楽器の下取・買取」(2026年8月13日確認)。三味線が名指しで入っている。ここは正確に読んでほしい。公式が書いているのは「店舗買取ができません」であって、「買取不可」ではない。しかも注記が付いている。
公式の「店舗買取ができません」を「買取不可」と書き換えている記事がある。「商品・状態によっては買取可能な場合もございます」という注記まで落ちているケースも見た。二次情報をそのまま写すと、こういう事故が起きる。
島村楽器の買取そのものの評判については島村楽器の買取評判は悪い?口コミ63件を分析にまとめてある。批判したいわけではない。事実を知っておいてほしいだけだ。
大型商品には出張の案内があるのに、和楽器にはない
同じページには、もうひとつ別の枠がある。「大型商品について」という項目だ。
| 区分 | 案内の内容 |
| 大型商品(電子ピアノ・ピアノ・エレクトーン・防音室) | 「出張買取をご利用ください」=代替の案内がある |
| 和楽器(琴・三味線・大正琴など) | 店舗買取ができない。出張買取への案内はない |
大きさが理由なら、和楽器も大型商品と同じ扱いになるはずだ。だがそうなっていない。サイズではなく扱いの厚みの問題だと読むほうが自然だと思う。ただしこれは俺の読みであって、島村楽器がそう説明しているわけではない。断定はしない。
比較サイト・おいくらの一覧では、タカミツ楽器の買取不可対象に三味線・三線が挙げられている(2026年5月更新の表記)。ただしこれは第三者メディアの記載であり、公式未確認だ。判断材料にするなら公式で裏を取ってほしい。
ただし「楽器店」と一括りにしてはいけない
ここが大事なところだ。「楽器店は三味線を買い取らない」と書いてしまうと、事実と違う。実際、「三味線 買取」で検索すると、楽器買取業者の実店舗が地図つきで出る。読者は検索結果でそれを目にしているはずだ。
| 区分 | 三味線の扱い |
| 楽器小売店(新品・中古の販売が主) | 買取品目に挙げていないことがある |
| 楽器買取の専門業者 | 和楽器を買取対象と明記している社がある |
| 骨董品・古美術の買取店 | 三味線を主要な取扱品として扱う |
| 和楽器・三味線の専門店 | 修理・張り替えまで自社で持つ |
正確に言えばこうなる。小売の楽器店と、買取の専門業者は別だ。前者の買取リストに載っていなくても、後者は普通に扱っている。
たとえば楽器高く売れるドットコムは、和楽器を買取対象と明記し、専用ページまで用意している。福ちゃんは買取品目一覧に三味線を載せている。
なぜこうなるのか——買取額の上限を決めているもの
元楽器店スタッフとして、この構造は説明できる。冒頭で書いたことをもう一度出す。買取額の上限を決めているのは、その店がその商品をいくらで売り切れるかだ。売値が読めない商品は、買値も上げられない。
- 総合リユース店:全ジャンルを扱うため、在庫リスクと保管コストを広く薄く抱える
- 専門業者:ジャンルを絞るため、誰にいくらで売れるかが読める
- だから「安く買い叩かれた」のではなく、業態が違うという場面が実際にある
業態ごとの違いをもっと細かく比べたい人は、楽器買取おすすめ30社|180項目の独自評価ランキングで業態別に整理してある。
三味線が楽器店の買取リストから外れているのは、意地悪でも不誠実でもない。楽器業界の販路に和楽器が乗っていない、というだけの話だ。
三味線は持ち込みで買取できる?売れる場所4つを解説
ここからは、実際に持ち込む場合の話をする。結論から言えば、三味線は持ち込みで買い取ってもらえる。全長は約100cmで、車があれば無理なく運べるサイズだからだ。ただし「どこに持ち込むか」で結果はまるで変わる。候補を4つに分けて見ていく。
① 骨董品・古美術の買取店
意外に思うかもしれないが、三味線を最も多く扱っているのは骨董の販路だ。検索結果を見ても、骨董品買取店が最多の枠を占めている。理由は単純で、三味線が和楽器だからだ。掛軸、茶道具、着物と同じ棚の商品として扱われている。
- 向いている人:着物や掛軸も一緒に整理したい
- 強み:材質・時代・作りを見る目がある
- 注意:楽器としての機能面(音・調整)は評価軸に入りにくい
② 楽器買取の専門業者
三味線が骨董一色にならない理由が、サイズにある。約100cmは送れるサイズだ。だから楽器買取業者も参入できている。
この見方は、他の和楽器と比べるとはっきりする。琴は約180cmで、宅配便の枠に収まらない。だから琴の買取はほぼ骨董の販路に閉じている。
琴は約180cmで送れない。大正琴は本体価格が低く、送料に見合いにくい。一方で三味線(約100cm)と尺八は送れる。だからこの2つだけ、楽器買取業者が検索上位に入ってくる。和楽器のなかでも扱いが分かれるのはここが理由だ。
選ぶときの基準はひとつでいい。買取品目の一覧に三味線が書いてあるかを見る。書いてある業者を選べば、断られる確率は下がる。先に挙げた福ちゃん楽器買取は、和楽器5品目のなかに三味線を明記している。買取方法は出張と店頭の2つだ。
③ 総合リサイクルショップ
一番近くて、一番入りやすい。だから最初の候補になる。俺自身、引っ越しを急いで機材をまとめて持ち込んだことがある。あのときの帰り道は、車のハンドルを握る手がずっと震えていた。後から専門業者の相場を知って、腰を抜かした。



誤解しないでほしいんだが、店員さんが悪いわけじゃない。三味線の棹の材質まで判定できるスタッフを、全ジャンルの店に置くのは無理な話だ。
ここは業態の問題だ。扱う商材の幅が広いほど、1ジャンルあたりの判定精度は落ちる。近さと引き換えに、精度を諦めていると考えたほうがいい。
④ 和楽器・三味線の専門店
修理と皮の張り替えを自社で持っている店だ。数は多くないが、地域によっては近所にある。強みは、流派や寸法の相談ができること。「この寸法は今も需要があるのか」といった話は、専門店でないと返ってこない。
実際、「三味線 買取」の検索結果では、三味線専門店が上位に入っている。ページの文字数はごく短いのに、だ。専門性そのものが評価されている面がある。
専門店は、扱う品の基準がはっきりしている場合がある。前の章で挙げた、メンテナンスしていない花梨・紫檀についての公表が、まさにこれに当たる。
基準があること自体は、目利きが働いている裏返しでもある。断られたら、別の販路に回せばいい。
持ち込む前に、電話を1本かける
4つの候補を挙げたが、共通してやってほしいことがひとつある。家を出る前に電話を1本かけることだ。聞くのは一言でいい。「三味線を買い取っていますか」。これだけで、車に積んで運んでから断られる展開を潰せる。
| 持ち込み先 | 同時に出せるもの | 向いている人 |
| 骨董品・古美術店 | 着物・掛軸・茶道具 | 遺品整理でまとめて出したい |
| 楽器買取の専門業者 | 他の楽器・オーディオ | 楽器としての評価がほしい |
| 総合リサイクルショップ | 家具・家電など何でも | とにかく近くで済ませたい |
| 和楽器・三味線専門店 | 三味線関連の付属品 | 流派・寸法を相談したい |
ちなみに中古楽器がどこで流通しているかは、公的な調査でも見える。環境省の令和6年度リユース市場規模調査によると、楽器類の購入経路のうち店頭は15.0%しかない。
全品目の平均は34.9%(自動車・バイクを除く)だから、楽器は平均の半分以下しか店頭で買われていないことになる。
出典は環境省 令和6年度 リユース市場規模調査 報告書(令和7年6月公表)。これは消費者が中古品を「買った」金額の調査であり、買取額の調査ではない。読み取れるのは「中古楽器を買う人は一定数いるが、その多くは店頭以外で買っている」までだ。
三味線の持ち込み買取で「損する人」の共通点
持ち込みという選択そのものは悪くない。その場で現金になるし、対面で話も聞ける。ただ、持ち込みには持ち込み特有の落とし穴がある。査定台の向こう側にいた人間として、ここは書いておきたい。5つある。
1軒目で決めてしまう
これが一番多い。そして一番よく後悔されるパターンでもある。理由は心理的なもので、荷物を積んで、運転して、店まで運んだ後だと、「もう一度積み込む」のコストが跳ね上がるからだ。
出張なら家にいるだけで複数社に見てもらえる。宅配なら送るだけだ。持ち込みは1軒ごとに移動が発生するため、構造的に比較しづらい。ここを分かったうえで選ぶなら問題ない。
業者によって数千円から数万円の差が出ることは、珍しくない。専門業者のほうが高くなる傾向はあるが、それも品によって変わる。だから最低でも、価格を聞いてから一度持ち帰る余地を残しておいてほしい。その場で売らなければいけない決まりはない。
付属品を家に置いてくる
三味線だけ抱えて店に行く人が多い。ケースが大きいから、撥は小さいから、と理由はいろいろある。だが本体だけでは「揃った状態」の評価を受けられない。付属品は後から持ち込んでも、査定はやり直しになる。
- ハードケース(本体が入っていた箱・袋も)
- 撥・駒・交換用の糸・譜面台
- 桐箱・証書・購入時の書類
- 使わなくなった古い撥(複数あれば全部)
磨いてしまう
気持ちは分かる。少しでもきれいに見せたい。俺もやった。そして失敗した。やっていいのは乾いた柔らかい布で埃を落とすまで。溶剤・オイル・研磨剤・水拭きは使わない。



棹の塗装や胴の彫りは、一度傷めたら戻せない。査定士が見てるのは「きれいか」じゃなくて「元の状態が残ってるか」だ。ここを間違えると逆効果になる。
皮は特に触らないでほしい。破れかけの皮を拭くと、そこから一気に広がる。
「今日決めてください」に押される
持ち込みでも、その場での即決を求められることはある。相手も商売なので、話を進めたい気持ちはある。だが持ち帰る権利は常にこちらにある。金額に納得できないなら、そのまま持って帰っていい。
業者への不安が拭えないときは、公的なリストで確認する方法がある。調べ方は訪問買取トラブルの業者名はどこで調べる?公的リストの見方にまとめてある。持ち込みの前に一度見ておくと、判断が落ち着く。
皮が破れているからと、家を出る前に諦める
この章で一番損しているのは、実はこれだ。持ち込みまで行き着かず、玄関で引き返してしまう人。もう一度書いておく。皮は張り替えが前提の部品で、破れていても買取されるケースがほとんどだと業者自身が公表している。



破れてるほうが、逆に胴の中が見えるって話もありましたよね。



そう。だから「破れてるから見せる意味がない」って判断だけはやめてくれ。捨てる前に一度見せる。それだけで結果が変わることがある。
実は持ち込みより「出張買取」が三味線に最適な理由
ここまで持ち込みの話をしてきて、最後にひっくり返すようで悪いのだが——三味線は出張買取のほうが向いている場面が多い。理由は3つある。運搬のリスク、比較のしやすさ、そして同時に見てもらえることだ。順に説明する。
運べる。でも、運ぶ間にリスクがある
約100cmは運べるサイズだ。ただし運べることと、運んでいいことは違う。思い出してほしい。減点が重いのは天神と棹だった。そして天神は、構造上いちばん折れやすい場所にある。
- 後部座席で立てかけていたものが、カーブで倒れて天神をぶつける
- ケースなしで運び、駐車場から店まで歩く間にドアや壁に当てる
- 真夏の車内に置いたまま買い物に寄り、熱で皮や接着に負担をかける
俺はフリマアプリで売ったギターを配送中に破損させたことがある。梱包が甘かった。補償も出ず、想像以上の損失を出した。あれ以来、運ばずに済む方法があるなら、そっちを選ぶようにしている。
持ち込みは「断られたら手ぶらで帰る」がある
前の章で書いた販路の話がここに効いてくる。楽器小売店の買取リストに三味線が載っていないことがある、という話だ。運んでから断られると、往復の時間と手間がまるごと消える。出張なら、来てもらう前の申し込み段階で対象かどうかが分かる。
出張買取が初めてで手順が不安なら、予約から当日、入金までの流れを出張買取の流れは4ステップにまとめてある。出張なら三味線以外のものも同時に見てもらえる。実家じまいでは、これがかなり効く。
出張・宅配・店頭。三味線ならどれか
3つの買取方法を、条件で並べた比較表を置いておく。三味線の場合は「運搬の負担」と「その場で完結するか」の2点で見てほしい。
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| 出張買取査定士が自宅に来る | 宅配買取ダンボールで送る | 店頭買取店舗に持ち込む | |
|---|---|---|---|
| おすすめ度 | S 楽器買取に最適 |
B | A |
| 手軽さ | ◎ 自宅で完結電話1本で予約→自宅で待つだけ | △ 梱包が手間梱包→発送→入金まで数日 | △ 運搬が必要重い楽器を自分で運ぶ必要あり |
| 査定スピード | ◎ 最短30分〜即日その場で査定→即現金 | ✕ 数日〜1週間到着後に査定→振込 | ◎ 即日その場で査定→即現金 |
| 費用 | 無料出張料・査定料0円 | 無料送料・ダンボール無料の業者あり | 交通費は自己負担ガソリン代・駐車場代など |
| 大型楽器 (ピアノ・ドラム等) |
◎ 最適重くても運ぶ必要なし | ✕ 難しい梱包・配送のリスク大 | ✕ 難しい車への積み込みが大変 |
| 小型楽器 (エフェクター等) |
◎ 対応可 | ◎ 最適小さいので梱包が楽 | ◎ 対応可 |
| 配送時の 破損リスク |
◎ リスクなし目の前で査定するため | ✕ リスクあり配送中にネック折れ等の可能性 | △ 自分で注意運搬時の取り扱い次第 |
| 価格交渉 | ◎ しやすい対面で査定理由を聞ける | ✕ しにくい電話やメールでのやり取り | ◎ しやすいその場で交渉可能 |
| キャンセル | ◎ 無料納得いかなければその場で断れる | △ 返送料に注意業者によっては返送料自己負担 | ◎ 無料そのまま持ち帰ればOK |
| 対応エリア | 全国対応主要業者は全国出張可能 | 全国対応どこからでも発送可能 | 店舗がある地域のみ近くに店舗がないと利用不可 |
| 一度に売れる数 | ◎ 制限なし何点でもまとめて査定OK | △ ダンボールの数大量だと箱数が増え手間も増える | △ 運べる分だけ車に積める量が上限 |
| メリット まとめ |
・自宅にいるだけでOK ・大型楽器も対応 ・その場で現金受け取り ・破損リスクゼロ ・まとめて大量に売れる |
・対面不要で気楽 ・忙しくても時間を選ばない ・小型楽器に向いている ・全国どこでもOK |
・その場で現金受け取り ・対面で価格交渉できる ・自分のペースで持ち込める ・査定を目の前で見れる |
| デメリット まとめ |
・自宅に人を入れる必要あり ・日程調整が必要 ・在宅している必要がある |
・梱包が面倒 ・配送中の破損リスク ・査定まで数日かかる ・価格交渉がしにくい |
・重い楽器を自分で運ぶ ・近くに店舗がないと利用不可 ・移動時間と交通費がかかる |
| こんな人に おすすめ |
・ギターやピアノなど大きい楽器を売りたい ・複数の楽器をまとめて売りたい ・楽に高く売りたい人 |
・エフェクターやマイクなど小型機材を売りたい ・人と会わずに売りたい ・近くに業者がない地域の人 |
・すぐ現金が欲しい ・自分の目で査定を確認したい ・近くに専門店がある人 |
※査定スピードは各社公式サイトの表記です(2026年8月4日確認)。実際の対応時間はエリア・時間帯・混雑状況により異なります。各業者により対応状況が異なります。詳しくは各公式サイトでご確認ください。
表の読み方をひとつだけ。宅配は送るだけで済むが、三味線は縦に長く、梱包の難易度が上がる。ハードケースがあるかどうかで変わる。ケースがないなら、宅配より出張のほうが安全だ。梱包材を自分で調達して長物を包むのは、思っている以上に難しい。
それでも持ち込みが向く人はいる
誤解しないでほしいのだが、持ち込みを否定したいわけじゃない。向いている条件がはっきりある。
- 近所に和楽器や骨董の専門店がある(移動コストが小さい)
- その場で現金化したい
- 流派・寸法・張り替えの相談を対面でしたい
- ハードケースがあり、運搬に不安がない
この条件に当てはまるなら、持ち込みは十分に合理的な選択だ。実際、対面でしか聞けない話は確実にある。



要は、方法に優劣があるんじゃなくて、あんたの状況に合うかどうかだ。運ぶのが不安なら出張、近くに専門店があるなら持ち込み。それだけの話だな。
査定に出す前にやっておく準備
出張でも持ち込みでも、やることは同じだ。特別なことはしない。むしろ「やりすぎない」ほうが大事な楽器だと思っておいてほしい。3ステップで終わる。
ハードケース、撥、駒、交換用の糸、譜面台。桐箱の底や押し入れの別の段まで探す。使わなくなった古い撥も一緒に出す。
柔らかい乾いた布で、棹と胴の埃を落とすだけ。溶剤・オイル・研磨剤・水拭きは使わない。皮には触れないこと。
三味線は桐箱や証書が残っていることがある。作家名・工房名の記載は判断材料になる。あれば一緒に見せる。
ひとつ補足しておく。書類に作家名が書いてあっても、その名前だけで金額は決まらない。状態と仕様が揃って初めて評価になる。ネットで作家名を検索して出てきた金額を、そのまま自分の三味線に当てはめないでほしい。がっかりする確率のほうが高い。
電話やメールで先に相談する場合、棹の全体・天神・胴の内側・撥と糸巻の4枚があると話が早い。明るい場所で、真上から撮る。破れている箇所は隠さずに撮ること。
値段がつかなかったときの出口
全部が売れるわけじゃない。ここは正直に書く。値段がつかなかったときにどうするかを、査定に出す前に決めておくと気持ちがずいぶん楽になる。選択肢は4つだ。
「専門家が見て値段がつかなかった」は、判断材料になる
冒頭で書いたことに戻る。多くの人は、売りたいわけじゃない。捨てていいのかを知りたいのだ。自分ひとりで下した判断は、後から揺り戻しが来る。だが「専門家に見せたうえで、値段がつかなかった」なら、話は変わる。
親戚に聞かれても答えられる。自分の中でも整理がつく。査定は売るためだけの手続きじゃない。だから査定だけ受けて断る、という使い方でいい。査定だけで断れるのかも先に読んでおくと安心できる。
処分の方法と、その前に確認すること
出口を整理しておく。どれが正解ということはない。状況で選べばいい。
| 出口 | 確認すること |
| 買取に出す | 買取品目に三味線があるか |
| 無料引き取りに出す | 後から費用が発生しないか/許可の有無 |
| 自治体の粗大ごみ | 区分と料金は自治体ごとに違う |
| そのまま保管する | 湿度と直射日光を避けられる場所か |
気をつけたいのが2行目だ。「無料で引き取ります」という案内には、確認しておくべき点がいくつかある。
同じ論点をエレクトーンで細かく検証した記事がある。古いエレクトーンの「無料引き取り」に飛びつく前に読む記事だ。許可の話まで踏み込んで書いてある。
「置いておく」も選択肢のひとつだ
売らない、捨てない、そのまま置いておく。これも立派な選択だ。決めきれないなら、決めなくていい。ただし保管するなら条件がある。直射日光と極端な乾燥・湿気を避けること。ケースに入れて、押し入れの上段より下段に置く。
待てば上がる、とは書けない。楽器の中古相場は上にも下にも動く。帝国データバンク「楽器店市場」動向調査 2023では、2022年度の楽器店市場は前年度比0.6%増の1,939億円と報告されている。
同じ調査は「エレキギターは中古販売の在庫がやや多い」という販売店の声も伝えている。新品が売れれば、いずれ中古も出回る。単純な右肩上がりにはならない。
三味線だけが出てくる家は、たぶんない
実家の整理で三味線が1棹だけ出てくることは、経験上あまりない。譜面台があり、桐箱があり、その隣に着物がある。ここでは、まとめて出すという話をする。手間の総量が変わってくるからだ。
和楽器は「一式」で出てくる
稽古事が続いた家には、複数の和楽器が残っていることがある。母が三味線で、祖母が箏だった、という具合に。ただし楽器ごとに売り先の事情が違う。三味線と同じ感覚で他の和楽器を出すと、話が噛み合わないことがある。
- 箏(こと)——約180cmで送れない。箏の買取相場と、売れる箏・売れない箏
- 大正琴——約60cm。大正琴の買取で別に扱っている
- 尺八——約54cm。尺八の買取を参照
- 全体像は和楽器買取のまとめ記事にある
それぞれ深追いはしない。三味線とは事情が違うので、該当するものがあれば個別に見てほしい、というだけだ。
着物・箪笥・掛軸と一緒に出せる業者がある
実家じまいの現場で効いてくるのが、ジャンルを跨いで見られるかどうかだ。1回で済むかで労力がまるで違う。三味線のために業者を呼び、着物のために別の業者を呼び、食器のためにもう一社——これを平日にやるのは現実的じゃない。
ウリエルの運営元である株式会社クオーレは、2011年設立。不用品回収から始まり、遺品整理事業を経て買取に至った会社だ。
出張エリアを限定した経費削減で高価買取につなげていると公式に掲げている。対応エリアは17都府県。訪問購入のクーリング・オフは、契約書面を受け取った日から8日以内だ。
公式の神奈川ページには「三味線や琴などの和楽器」という記載があり、骨董品のページにも和楽器が入っている(2026年8月13日確認)。
評判が気になる人向けに、口コミを全件読んだ記事もある。ウリエル楽器買取の口コミ評判【272件全件解析】で、良い声も悪い声もそのまま並べてある。
着物や骨董と一緒に出したい人向けの窓口
下に置いたのは、三味線だけでなく着物・骨董・食器をまとめて見てもらいたい人向けの窓口だ。実家じまいの文脈なら、こちらのほうが1回で片づく。
ただし対応エリアは17都府県に限られる。圏外に住んでいる人は、次の章を読んでほしい。
エリアで選ぶか、全国で選ぶか
業者選びの最後の分かれ道は、住んでいる場所だ。出張買取のエリアは業者ごとにまったく違う。ここを先に見ておくと、無駄な問い合わせが減る。地方に住んでいる人ほど、この章は先に読んでおいてほしい。
出張エリアは業者ごとに違う
全国対応の業者と、エリアを絞っている業者では、そもそも土俵が違う。どちらが優れているという話ではない。
エリアを絞る業者は、移動コストを抑えた分を買取額に回すという考え方を採っていることがある。全国対応は逆に、どこでも来てもらえる安心がある。
- 対応エリアのページ(都道府県名だけでなく市町村の但し書きも見る)
- 買取品目の一覧(三味線・和楽器の記載があるか)
首都圏・関西の読者へ
都市部は業者の密度が高い分、選択肢も多い。地域ごとの買取店を先に把握しておくと、比較の当たりがつけやすくなる。
横浜の記事のタイトルにある「運べるか、運べないか」は、そのまま三味線にも当てはまる。約100cmは、その境目のちょうど内側にある。
エリア外なら全国対応を軸にする
17都府県の外に住んでいるなら、全国対応の業者を軸にしたほうが早い。エリア確認の手間が省ける。楽器高く売れるドットコムは東証スタンダード上場企業が運営していて、和楽器の専用ページを持っている。
ついでに書いておくと、同社は「三味線 買取」の検索結果でも上位に入っている。この記事が言っている「三味線を扱う業者」に、実際に当てはまる社だということだ。
大手ほど口コミの母数が増え、当然ながら厳しい声も混ざる。良い評判も悪い評判もまとめて見たいなら、高く売れるドットコムの評判はひどい?理由と損しない3つの活用術を先に読んでから申し込んでもらってもいい。順番はどちらでも構わない。
三味線の買取でよくある質問
最後に、検索で実際に多い疑問をまとめて片づける。ここまで読んだ内容の確認にも使ってほしい。金額に関わるものは、公表されている情報の範囲で答える。
- 三味線の買取相場はいくらですか?
-
棹の材質で帯が変わります。バイセルの公表では花梨が数百円〜5,000円程度、紫檀が5,000円〜30,000円程度、紅木・金細が30,000円〜数十万円以上とされています(2026年8月13日確認)。
これは公表されている相場であり、個別の査定額ではありません。実物を見ないと金額は出せないため、帯の目安として読んでください。
- 皮が破れているのですが、売れますか?
-
売れるケースがほとんどです。バイセルは「皮は張り替えが可能なので、破れていても買取してもらえるケースがほとんど」と公表しています。減点にはなりますが、致命傷ではありません。ガムテープなどで補修せず、そのまま見せてください。
- 糸(弦)が切れていても大丈夫ですか?
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糸は消耗品なので、皮よりさらに軽い扱いです。ヒカカク!が紹介している実績には、弦と皮が切れたジャンク品扱いの紅木地唄三味線が30,000円という例もあります。張り替えずに、そのまま出して構いません。
- 津軽三味線は高く売れますか?
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太棹は中古市場の需要が高いと複数の業者が挙げています。ただし五宝堂の参考買取価格には、津軽三味線で35,000円・38,000円の例と、12,000円の例の両方が載っています。種類だけで決まるわけではありません。
- 撥が象牙かもしれません。売れますか?
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象牙は種の保存法の対象ですが、相続した遺品の整理として1回限り譲渡する場合、あなた自身の登録は不要です(環境省・2026年8月12日確認)。
登録義務があるのは買い取る事業者側で、特別国際種事業者の登録簿は公開されています。断られた場合、業者の姿勢ではなく登録の有無という制度上の理由であることがあります。
- 楽器店に持ち込めば買い取ってもらえますか?
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店舗によります。島村楽器は和楽器(琴、三味線、大正琴など)を「買取取り扱いのない楽器」として挙げ、店舗買取ができないと明記しています。
ただし「商品・状態によっては買取可能な場合もございます」という注記もあります。一方で、楽器買取の専門業者や骨董品買取店は扱っています。
- 査定だけ受けて、売らずに断れますか?
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断れます。査定は無料で行っている業者がほとんどで、金額に納得できなければ売らずに終わって構いません。「専門家が見て値段がつかなかった」という事実自体が、その後の判断材料になります。
- 三味線と一緒に箏や尺八も出せますか?
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まとめて対応できる業者はあります。ただし楽器ごとに事情が違い、特に箏は約180cmで宅配に向きません。出張買取で一度に見てもらうのが現実的です。
まとめ——見るのは、棹の木材だ
長くなったので、持ち帰ってほしいことを絞る。三味線の買取で迷ったとき、思い出すのは3つだけでいい。あとは全部、実物を見た人が判断してくれる。
3つだけ持ち帰ってほしい
- 相場は棹の木材で桁が変わる。だから「三味線の相場」に一律の答えはない
- 皮が破れていても売れる。張り替えが前提の楽器だから
- 楽器小売店の買取リストにないことがある。でも扱う業者はいる
持ち込むか、出張を呼ぶか、宅配で送るか。それを決めるのは、この3つを押さえてからでいい。順番を逆にすると、たいてい遠回りになる。
他の和楽器も一緒に出てきたなら、和楽器買取のまとめ記事に全体像がある。楽器ごとに事情が違うので、そちらで確認してほしい。
売らなくてもいい。まず見てもらう
最後にもう一度書いておく。この記事を読んでいる人の多くは、たぶん高く売りたいわけじゃない。母が大事にしていたものを、どう扱えばいいのか分からないだけだ。その答えは、見てもらってからでいい。



俺は祖父の遺品の真空管アンプを「古くて値段つきません」の一言で手放して、後からその機種の取引価格を知って愕然とした。あのとき、もう一社に聞いてさえいればな。俺の屍を越えてくれ。
査定は無料で受けられる。断ってもいい。それでも「見てもらった」という事実は残る。次の判断がずいぶん楽になる。
下のボタンは、記事の冒頭でも紹介した窓口だ。公式の買取品目一覧に三味線が載っている業者から始めれば、少なくとも「対象外です」で終わることはない。
押し入れの奥で、三本の糸が張られたまま眠っている一棹。捨てるかどうかを決めるのは、見てもらった後でいい。


